(五)

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 残念ながら遺体の身元引受人である明美の実親は、とうとう現れなかった。結局、善意あるN市の寺院が、遺骨を引き取ることになったそうだ。     「私達もちゃんと供養しないといけないわね。だって明美さんは、大地の命の恩人だもの」  私の気持ちには偽りはなく、真剣そのものだった。 「そうだね。確かに嫌な思いはしたけれど、彼女のおかげで大地の出生も知ることができたからな。母親は捨てたはずの赤ん坊が今でも生きているなんて、想像すらしていないだろうね」  大地を産んだ母親にとって、あの時の赤ん坊はもう過去のゴミなのだろうか?  ショッピングセンターのトイレで産み落とし、ゴミ箱に捨てたゴミ。世間的には発見されなかった赤ん坊は、ゴミとして処理されたと思っているのだろうか?  実の母親はそれで全てを消し去ったつもりでいるのだろうか?  真実を語らなかった今、私達家族の秘密は世間には知られてない。広瀬の隠し子騒動も、大地の母親にとっては無関係の話で終わってしまった。だから、彼女が捨てたゴミとは、一生結びつかないままなのだろう。  あの日捨てたゴミが、今でも元気に暮らしている―― そんなことは思いもよらないだろう。
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