風が吹いたから

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 「それでは、先生に何かご質問ある方、いらっしゃいますか。」 5年2組の教室にある扇風機の音とともに、私の声が響き渡った。 「ないようですので、これで懇談会は終わりにしたいと思います。みなさま、楽しい夏休みをお過ごしください。」  締めの挨拶をして、終わりかと思われたころ、それが起こった。  年季の入った扇風機は、私のところで首振りモードが停止状態になった。 一体、小学校のものというのは、何年使えば変えてくれるのだろう。 大切に使うということも大事だが、壊れても使い続けるのは違うのではないだろうか。  私のところで止まった扇風機は、とても気持ちいい強い風が体当たりにふいてくれた。  もう、むりだ。  ここで手を頭に持っていくのはとても不自然だ。  おそらく、踊り場でみたときのように、扇風機の風は私の頭を散らかし、スーパーギガフサッサーをきらきらさせ、みんなに見せてくれているに違いない。  もう少しで、私が泣きそうな瞬間、ハナコちゃんママが窓を指さし、「あ!ハチが入ってきた!」と立ち上がった。  教室にいたママたちは騒ぎ出し、先生は「落ち着いてください、みなさん、廊下にでてください」とバタバタみんな動き始める。  「みんな、頭を下げて重心をしたに!ハチは黒いものにやってくるから頭を隠して!」ハナコちゃんママはそう言いながら、廊下にみんなを誘導させた。  「さ、たっくんママ、行こう!」  ハナコちゃんママ、知っていたんだね。  ありがとう。   「うふふ。そうだね!さ、行こう」
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