1950の一瞬

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 一瞬の出来事だった。私が呆然としている間に恐ろしい速さで通り過ぎていく。あの痩せた男が強盗犯なのだと理解したのも、去ってからだった。  男の安否を確かめるべく車を降りると、屈強な体は地に伏せていた。 「なあ、起きろよ」  私が声をかけても男は答えない。よく見れば、男の胸部にぽっかりと大きな穴があいていた。  運転席に座って未来のことを話していた口からは、希望や未来とは程遠い、どろどろとした液体がこぼれている。 「起きて、くれよ」  撃たれてすぐに駆け付けていたら、まだ答えてくれただろうか。問いかけても、通り過ぎていったものは答えてくれない。  男はもう、動かなかった。  男の財布が見つかったと連絡がきたのは、数年が経った頃だった。  しかし犯人は亡くなっていた。どうやらあの後、隣の州まで逃がれたらしいが、何者かに撃たれて殺されたらしい。  犯人の自宅から大量のドラッグと遺書が見つかった。遺書にはどこかで聞いたような強盗殺人計画が書き記されていたが、何年も経っている。今更聞いたところで何も戻ってこない。  男は、同じ計画をした者に殺されたのだ。それが家族を奪ったのと同じ、ドラッグに溺れた者だったというオマケ付きで。
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