1950の一瞬

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*** 「腹が減ったな」 「賛成だ。ホットドッグが食べたい」  同意すると、男はハンドルから片手を放してポケットを探った。出てきたのは男が愛用しているボロの財布だった。バスケットボールの絵が入っているのだが、手垢に塗れた上に糸もほつれている。それでも男はこの財布を手放そうとしなかった。 「ハハッ、これは愉快だ」 「何がおかしい?」 「これから強盗しようってヤツが、わざわざ金を使うなんておかしな話だ」  男は、そんなこともわからないのかと挑発するように、チッチッと舌を鳴らした。 「美味しいステーキが目の前にある。その前にハンバーガーを食べるのか? 空腹は最高のスパイス。犯罪だってそうさ、数ドルをケチって、最高のショーが失敗するぐらいなら俺は惜しまずホットドッグにドルを払うね」 「なるほど」 「買うものはホットドッグと……ありったけのコークだ」  男は楽しそうに瞳を細め、ハンドルを切った。
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