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「いいのに。こんなことしなくて」 「でも。僕はバカで、お母さんに、たくさん、たくさん、めいわくをかけているから」 「そんなことないわよ」 「でも、いろんな人に、めいわくをかけて、お母さんに、ごめんなさい、ごめんなさいって、いつも言ってもらっているでしょ。悪いことをしてしまったんだなって、いけないことをしてしまったんだなって、後で気づくけど。でも、僕はバカで、もの覚えが悪いから。だから、いつも、いつも同じことで、失敗しちゃって。それで、その…。ごめんなさい」 「べつに、そんなこと。あなたが、あやまらなくていいのよ」 「でもね、だからね。お母さんには、すごく、すごく、かんしゃしているの。お母さんの子どもで、よかったなって思っているの。こうして、お母さんのおかげで、会社で、はたらくことができて。仕事も、だいぶできるようになって。マコトさんから、おんがえししなきゃ、ダメだぞって言われていたから。今日は、お母さんのたんじょうびでしょ。だから、マコトさんにそうだんして、お昼休みに、いっしょに買ってきたの。それで、その…。えーと。お母さん、ありがとう」 思っていることを、ぜんぶ言えたのかは、よくわからないけど。 でも、たくさんしゃべった。たくさん。 「ありがとうね」 「ほんとうに、ありがとうね」 お母さんは、何度もそう言って、ふるえていた。 22:00 ねる。
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