嘘に本音を混ぜて

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 花束は駄目だったから、押し花のしおりを手作りしてそのまま彼女へ渡すことにした。 「先輩好きです! 俺と付き合って下さい!」  いつものように、先輩へ愛のメッセージを乗せて。  だが先輩は、俺のしおりをチラッと見た状態のまま、何も言わず動かなくなってしまった。 「……先輩?」 「そうね」 「え?」 「いいわよ。いろんなものを貰っちゃうし、付き合ってあげるわ」 「………………え!?」  え、嘘だろマジかよ。  先輩が……あのツンが強い先輩が、俺と付き合ってくれるって言ってくれた……!? 「先輩! 俺大好きで――――――」 「それで、どこへ行きたいの?」  俺の言葉を遮った先輩の声に、一瞬固まってしまった。 「え?」 「うん?」  お互い首を傾ける。  先輩はきょとんとしたまま。俺は唖然としたまま。 「いやいや先輩。俺は好きって言ったんですけど!? 付き合って欲しいって言ったんですけど!?」 「ええ分かってるわ。だから付き合うのよ。貴方が行きたい場所に」  あっこれ絶対に分かってないパターンだ。  心の中で分かってしまった。先輩はそれほどまでにも俺に好意を抱いていないってことが。 「先輩……俺本当に好きで……」 「ええ、ありがとう」 「グスッ―――――そうじゃないんですよ先輩のばかー!!」  先輩から背を向けて駆けだす。  号泣している俺を先輩に見られたくないから、早くその場から逃げていく。  ああもう男らしくないぞ俺! でも無理だって俺!  ここまで先輩にアタックしてるのに何で先輩は俺の事見てくれてねーんだよ!!  先輩のばかー! でも好きだー!! 「……知ってるわよ。ばか」  頬を赤くした先輩に気づかないまま、俺はその場を逃げ去った。
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