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少年が追いかけ、少女は逃げる
艶やかな黒髪。海のような綺麗な青色の瞳。
バッサリと一刀両断する強気な口調。
不良も優等生も関係なく平等に接するその性格。
そんな先輩に、俺は一目惚れをした。
「好きです! 付き合って下さい!!」
胸がドキドキと高鳴っている。心臓が口から出てしまいそうだ。
頬も赤くて、情けない顔をしているかもしれない。
でも彼女に俺の想いを伝えたくて―――――――。
「あっそう。用事ってそれだけ?」
先輩が放った一言に、思わず思考が停止した。
「え?」
「悪いけど私、これからバイトがあるから」
そう言った彼女が、俺の一世一代の告白をなかったように振る舞って離れていってしまった。
まるでオフィスでキャリアを積み上げた凄腕の女性のように。あっさりと。
いや、バッサリと俺の言葉をなかったことにした。
心が震える。いや怒りとか悲しいとかそう言うんじゃなくて……。
「格好良い……さすが先輩! 好き!!」
なんかもうああいうバッサリと言う姿が見れただけでもラッキーな気がした。
決して告白がなかったことにされたからってことで泣いてるわけじゃない。
うん。俺は先輩が好きだ。その気持ちを否定されたわけじゃないから。泣く暇なんてない。
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