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それは愛ではない何か
「お前は、背が低くて良かったな」
高校大学と、よく一緒に過ごした友人に言われたことがある。俺は女子の平均をなんとか上回るほどの背丈しかない。
「ちびのどこがいい」
俺は反論した。
「そんな強面で上背まであったら、誰も近寄れないだろ」
友人は百八十を超える長身で、甘いマスクをしていた。
先月その友人が癌で死んだ。まだ三十五歳だった。就職してからは、向こうが転勤族だったこともありなかなか会えなかった。それでも数年に一度は、都合をつけて会っていた。久しぶりに連絡がきたのは死の二ヶ月前だった。
数年ぶりの再会で、お互いの体重の変化を揶揄し合った。あいつは痩せ、俺は体重が倍増していた。
俺はあいつの死後の整理に、籍をいれたばかりの配偶者の今後についてまかされた。弁護士としての通常の仕事に加え、そのことで休日がつぶれていた。
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