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「ほら、いつも通りなら、迷わない」
「明日、早いんだよ」
「どうして、そういう適当な嘘をつくの? 本当に早いなら、来てなかったくせに」
俺は、帰りたいわけではない。本当に泊まっても良いか少し考えたかっただけだ。
「風呂に入る」
俺はいったん薫から離れたかった。
薫の部屋には俺の着替えが置いてある。来れば泊まるのが当たり前だからだ。それで、恋人同士なわけではない。不倫でもない。どう否定しようが、これは『セフレ』と呼ばれる関係だ。
やはりなんらかの話し合いは必要だ。今更、もう一度付き合うという方向性は考えにくい。どこかで関係には終わりが来る。人見達のような別れもある。今である必要はないが、いずれは訪れる。
シャワーを浴び終わり、リビングに戻る。
薫から先にベッドに入るように言われる。
話をして、眠るだけにはなりそうにない。俺達は数ヶ月に一度しか会わないが、会えば、そうなる。
布団には入らず、ベッドの端に腰掛けて待つ。薫は髪を乾かすのにどうせ時間がかかる。
俺自身がどうしたいのか、まず考える。
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