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俺は忙しいのもあって薫以降まともに付き合った相手はいない。何度か見合いをさせられたがニコリともせずにいれば、断られ終わった。
指定された店に着いた。薫は店の中で待っていた。名のあるシェフがやっていて、ソムリエも数人いるようだ。
薫は奥のテーブルに座っていた。珍しく気むずかしい顔をしている。
俺に気づいて顔を上げた。
最初に言われたことは「痩せた? だめじゃない」だった。俺が痩せたことを悪く言うのは薫だけだ。
席につく。
「もっとブクブクになって、いっそのこと、禿げたらいいのに」
ひどい言われようだ。ちびデブ禿が揃っても何一つ良いことはない。
「なんかイライラしてんな。欲求不満か?」
「会ってくれないから、女ができたかと思ってた」
「忙しいと言っただろう。できた時はできたと言う」
自分はよく男を作るくせに勝手な女だ。
腹が減っていたのでメニューを見た。俺好みの料理は見当たらなかった。グラタンを見つけて頼んだ。
薫は、一度聞いただけでは覚えられないなぞの料理を頼んでいた。
俺は、酒に拘りは全くない。ワインはソムリエ任せにした。
前菜の盛り合わせが来た。ガラス皿の上に、ちょこちょこと料理がのっている。見た目重視なのはよくわかった。
美味いが、一つ一つ少なすぎる。
「こんな量じゃ、太りようがないな」
薫が選んだ店だ。嫌みを言っておく。
「この後、ラーメン屋に行けばすむことでしょ」
薫がそっぽをむいた。
いつも通りなら、ラーメン屋には寄らずに、薫の部屋に行くことになるだろう。
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