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俺は、この関係を気に病んではいなかった。今から別の女に気をつかって、どうにか口説き落とそうとするよりは、合理的でいいと考えていた。
薫との関係は十年近い。「結婚したいなら、私とつきあい続けない方がいい」と言われてこうなった。薫は結婚を求めない男を探してさまよう。俺には結婚したいと思えるどころか付き合いたいと思える女も現れず今に至っている。
薫に男がいる間、他のやつとやっていようが気にならないのは、もう愛情がないあらわれだ。
食べ終わり、グラスに残ったワインを飲んでいた。
「今日、なんかいつもと違う」
薫に言われた。滅多にみせない弱気な表情をしている。
「本当に最近忙しいんだ。少し、疲れている」
当たり障りのない返事をした。
あいつが入院してからいろいろな話をする中で、配偶者と出会うまでの女性との関わり方について聞いた。特定の相手を作らずその場限りの関係を繰り返していたらしい。
自分は違う気がしていたが、特定の相手であるだけで中身はそう変わらない。
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