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ラフ
傍からみれば、平凡な子供だったと思う。
自分でも、わりとそう思っている。
そんなに勉強が得意でもなくて、机に座るのは嫌いで、だからといって剣に秀でてるわけでもなく、それでもみんなが誉めてくれるから頑張ってる。ふつうの子供だろう?
ただ、すこしばかり、好きなものへの情熱は強かったかもしれない。
あのとき、死と隣り合わせであったのはなんとなくわかっていた。
それをおしても望んだ結果、彼はここにいる。
いっしょにいられるのは、ぼくだからと思うのは己惚れだろうか。
ぼくは幼い頃、よく屋敷を抜け出す子だった。
庭は手入れされていたけど、ちょっと裏に回って登っていくと、人の手があまり加わっていなくて、薄暗い森だった。
そこでぼくたちは遊んだ。
危ないことはしないとか、そんなのはなかった。
そもそも彼といること自体、この上なく危険だった。
そして、大人たちは気付かなかった。
たぶんこの辺りで、常識は壊れ始めた。
大人たちが信じているもの、悪いと言っているもの、素晴らしいと思っているものなんて、ごく狭い世界のものなんだって。
常識をどうでもいいと思っていながら、ふつうのふりをするのも自然にできた。
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