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書類を見終わった高屋敷さんは、ふうと息を吐いた。
「大丈夫だ。後はこっちに任せてくれ」
「本当にお手伝いしなくても?」
「ああ。俺の前方不注意で君たちには迷惑をかけてしまい悪かった。棚橋さんにも改めてお詫びするよ」
棚橋さんの名前をきちんと覚えているなんて流石だ。
「いえ、彼女には私から伝えておきますので。商談頑張ってください」
「ありがとう。では」
生い立ちや外見だけでなく、内面までいい男だ。彼が営業で結果を出しているのも頷ける。
受付と秘書課を除き、総務と経理は社内でも女子が多い課だ。高屋敷さんが居なくなると、それまで静かに彼を見つめていた女子社員達が一斉に口を開いた。
「やっぱり正宗様って素敵」
「彼と結婚したい」
「彼女いるのかな?」
「そりゃ、あんなに素敵だからいるに決まってるわよ。それだけじゃなく婚約者とかもいるんじゃない?」
「ありえる」
「静かに!」
フロアに総務課長の冷ややかな声が響くと、ざわめきが瞬時におさまった。
すごい。
総務課長だけじゃなく、役に付いている人は全て社長が選んだ優秀な人材なだけある。
「桜庭、ちょっと」
課長の元に急ぐと、「ご苦労だったな」と少し柔らかい表情の課長が労いの言葉をかけてくれた。
「いえ、私は何も」
「棚橋から報告は受けた。これからも総務として会社のために頑張ってくれ」
「はい」
棚橋さん、自分の落ち度になるかもしれないのにきちんと報告したんだ。
やっぱり優秀だ。負けてられないな。
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