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2人目のお父さんは、感情が乏しい人。何をしても、言っても表情が動かない。
何を考えているのかわからなくて、でも話しかけてみたくて。
距離感を掴もうと頑張った。ただいまとおかえりは欠かさなかったし、ご飯もなるべく時間を合わせたし、話したかったことは全部話した。
ある日、いつものようにお父さんに一方的にではあるけど話をしていたら、たった一言こういわれた。無理はしなくていいと。
無理? 無理って何だろう。聞きたかったけれど、その無機質な目が何を考えているのかやっぱりわからなかった。
勝手にお父さんも私の話を楽しく聞いてくれていたんだと思い込んでいた。
その一方的な感情を殺さなきゃならないことに気がついた。
迷惑だったのかもしれない。そう思った私はその日以降、お父さんと話をするのをやめた。
お父さんは何も言わなかった。お母さんも何も言わなかった。家にいて誰かと話をすることが格段に減った。
だからお母さんに、今度のお父さんももう帰ってこないと言われてもやっぱり何も思えなかった。
今でも、二番目のお父さんが何を考えていたのかはわからず仕舞いだった。
お父さんがいない生活が半年くらい続いた後、お母さんはまた新しい男の人を連れてきた。
今度のお父さんは普通だった。
私が何かをしたら、反応をくれる人だった。
褒めてくれる、叱ってくれる、一緒に喜んでくれる、一緒に泣いてくれる。
普通のことだったのかもしれない、でも私にとっては涙が出るくらい嬉しいことだった。
今度のお父さんはきっと大丈夫だと思っていた。
その日は短縮授業だった。いつもより早く帰れる。お父さんは確か朝、今日はお休みだから一日家にいると言っていた。
今日の抜き打ちテストはいい点が取れたから、お父さんに伝えなきゃと私は走って帰った。
家に入る直前、驚かせてやろうとそうっと玄関の戸をあけて、居間に近づいた。
「やっぱりまだ駄目なの?」
「ああ、どんなに可愛くても所詮は血の繋がりなんてないからなあ」
びくり、と肩が震えた。
聞き間違いであってほしいと、思った。
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