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「君は何を考えているのか、イマイチわからないね」  結婚して半年が経った時、そんなことを言われた。 「不満があるんなら、言っていいんだよ? 何もかもが幸せだなんてこと、ないんだから」  わからなかった。だって不満なんてないんだから。  固まってしまった私に、彼は優しくゆっくりでいいんだよと言った。  ゆっくりでいい、何が?  私は、今本当に幸せで。私を愛してくれる人がいることが奇跡みたいで、幸福で。本当だった、嘘なんかじゃなかった。  なのに、信じてもらえてなかったのだろうか。  ううん違う、きっと私がわかりにくかったんだ、伝えきれていなかったんだ。だって私は、普通じゃないから。普通にしていれば、きっとこんなことを言わせることもなかったんだから。  ごめんなさい、と謝った私の髪を、彼は優しく撫で続けてくれた。  不満を言わないと逆に不安にさせるということを学んだ私は、2カ月に1度くらいの頻度で、彼に私のことを今でも好きかどうか聞いてみることにした。  それを確かめるのは大事だと本に書いてあったから。  彼は嬉しそうに大好きだよ、愛しているよと返してくれた。  あっていた、よかった。間違っていなかったんだ。私は、素直にそう思った。 「君は、僕のことをちゃんと好きかい? 愛しているかい?」  何回目だったか、同じ質問をした私に、彼はそう質問で返してきた。  勿論、大好きよ、愛しているわ。正解な筈だった。 「心から、そう思っている?」  疑われている? どうして?  わからなかった。途端に不安になった、間違えた、選択肢はまだ他に合ったのだ。  どうしよう、どうしようどうしよう。 「……ごめんね、泣かせるつもりはなかったんだ。ただ、不安だっただけなんだよ」  涙は止まらなかった。だってまた間違ってしまったんだから。2回も間違ってしまったら、きっと彼は私に愛想を尽かせてしまう。  また一人になってしまう、けど元は私は一人でいなきゃいけなくて、けど一人でいるのは寂しくて。  謝ったら彼はまた許してくれるのかな、行かないでって言ったら、彼は行かないでいてくれるのかな。  けど、それを伝えることって普通なのかな。私一人じゃ答えなんて出せない。  まだ私は、その正解を教えてくれる本にも、人にも出会えていない。
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