雨が降っている

　それから2週間くらい後だと思う。4限が休講になったのでいつもよりだいぶ明るい帰路についていた。中央線を快速で上っていくとつぎは阿佐ヶ谷、と聞こえた。この間喫茶店にはいったな、と思ったころには電車を降りていた。財布を確認して店に向かう。

　前と同じソファ席に座ってブレンドティーを頼んだ。窓から陽気が差し込んでいる。壁を見やると額縁が増えていた。銀色のフレームに雨に煙る工場群の絵が収められている。詳しくないからタッチとかはよくわからないけどもなんとなく同じひとが描いた絵だと思った。まっしろい空に対して工場は暗くごちゃついていて、ところどころ赤や青や黄色の電灯がついている。雨が好きなんだろうか、と思った。ブレンドティーは渋くて残した。

　1週間後にまた行ったが絵は増えていなかった。クリームソーダを頼んだらすごく安っぽい味がしたが嫌いじゃなかった。次もこれを頼もう。

　さらに1週間経って店に行きクリームソーダを頼んだ。嘘みたいな緑色をしている。壁を確認すると絵が増えている。カエルの絵だ。生き物も描くんだな、と眺める。瑞々しい目はいかにも眠そうで手足がぷにぷにと潤っている。背中が雨に鮮やかな青緑に光っている。かわいい。カエルが好きなんだろう。ストローを吸ったらずぞぞと鳴った。