先輩、足りません!

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ーーー次の日。 「へー、笹木先輩も弓道部だったんだね!」 「まあね」 残念ながら、と付けたくなるところを必死に抑え、まあねの一言にとどめた。 今日もまた、昼休みに中庭でお弁当を広げている中での菜子との会話である。 「でもすごい偶然!良かったね、志帆ちゃん」 「話聞いてた?昨日の笹木先輩の暴言も言ったと思うんだけど…」 「うん、聞いてるよ!『うるせえ!』ってやつでしょ?」 菜子は相変わらず、笑顔で話す。 『うるせえ!』という言葉も、菜子が言うと一気に可愛らしく聞こえるから不思議だ。 「だったらどこが良いのよ…」 私はうなだれて反論する。 「だってそれ、正しいんだよね?」 菜子のセリフは、真っ直ぐに私に飛んできた。 確かに、正しい。 静かにすべき状況だったのは、私にも分かった。 「だけど…」 分かっていても、納得できない。 「正しければ、何を言っても良い訳じゃないから…」 「悪かったな」 菜子と2人しかいないはずなのに、どこからともなく男性の声が降ってきた。 気づけばそこに、話題にしていた笹木先輩…と、菜子の恋人の椎名先輩が立っていた。 「っ……!」 私は驚きのあまりベンチから立ち上がり、絶句する。 まさか本人に聞かれているとは思わなかった。 「椎名先輩!先輩もお昼ですか?」 だが菜子は、こっちの青ざめは何のその、構わず先輩とるんるんで話し始めた。 「うん。良ければ一緒に食べてもいい?」 「もちろんです!!!」 菜子は食い気味でオーケーを出し、菜子の隣を明け渡す。 となれば必然的に、私も隣を明け渡すしかなかった。 あの、笹木先輩に。 (菜子のばか…椎名先輩の事となると周りが見えなくなるんだから……)
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