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「………」
私の突然の勢いに圧倒されたのか、先輩は無言になった。
代わりに、後ろからプッと吹き出す音が聞こえた。
「あはは!笹木にそんな風に言える女子、なかなかいないよ!」
後ろで、加納部長がお腹を抱えて笑っていた。
「部長…」
「なーに笹木。今のは確かにこの子の言う通り。笹木の言葉が足りなさ過ぎ!」
加納部長が、予想外に私の加勢をしてくれた。
笹木先輩は、加納部長には何も言い返せずに、うっ、という顔をしていた。
「さっきのもよ!あなたは言い方が残念過ぎる。『集中できないから静かにしてほしい』って優しく言えば問題なかったんだから!」
加納部長は、先ほどの笹木先輩の暴言も持ち出して、またバシバシと笹木先輩の左腕を攻撃する。
それから私の方を向き、話しかけてくれた。
「あなたも、嫌な思いさせてごめんねー。それでも残ってくれて本当に嬉しい!笹木、根はいい子だから、分かってあげてね」
(あ…椎名先輩や菜子と同じこと言ってる。この人の良いところが、分かる人には分かるのかな……)
「はい…」
加納部長にせがまれては、そう答えるしかなかった。
「あの…笹木先輩。私、椿原って言います。偉そうに説教してすみません」
「ああ、いや」
笹木先輩は、ぷいっとそっぽを向いて、謝りもしない。
(こっちは謝ってるのに、そっちは謝らないのね…)
という心の声を閉じ込め、私は努めて大人な対応をした。
そしてタイミングを見計らい、加納部長はパンパンと手を叩き、自分に注目を集めた。
「はい。もう騒がしいのはお終い。皆練習に集中しましょう!」
「「はい!!」」
部長の一喝に、部員一同が応える。
私も気を取り直し、高校生活初めての部活に励んだ。
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