先輩、足りません!

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椎名先輩の教室に行って、自分もこの高校に入学したことをサプライズ報告したこと。 それしか言えなくて走り去ったら、椎名先輩が追いかけてきてくれて、屋上に上がる階段のところで話したこと。 中学のときに話していた約束を、椎名先輩が覚えていてくれたこと。 自分から告白して………キスもしたこと。 「ちょっと待って!!!!」 「んー?」 ハートがいっぱい飛んでくる菜子の話を一旦止める。 「キス?…したの?」 私は思わず立ち上がり、前のめりになりながら恐る恐る尋ねる。 さらっと“キス”なんて、受け止めきれない。 菜子は、きゃ。っとお弁当の箸を持ちながら両手で頬を覆い、恥ずかしそうに、しかし、とても嬉しそうにした。 その反応でそれが本当なのだと察した。 「何その展開。早すぎてついて行けないわ」 座っていたベンチに、力が抜けるようにストン、と再び座る。 「えへへ。今度の土曜日、デートするんだー」 「はいはい。お幸せに」 半ばやっかむように、私は菜子に祝いの言葉を投げた。 「いいわね、恋」 私はため息混じりにそんな言葉を口走る。 菜子は中学時代から椎名先輩を好きになり、椎名先輩を追いかけてこの高校まで入り、見事恋人になれた。 ともすればストーカーのようでもあるが、あちらが菜子を受け入れてくれたなら万事問題ないだろう。 でも私は。 恋人どころか、まだ恋も経験していない恋愛未経験者だ。 幸せそうな菜子を見ていると、無性に恋人が欲しい、恋愛がしたい、そう思えてくる。 しかも菜子は1日でキスも経験したとなれば、焦りはより強くなる。
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