2人が本棚に入れています
本棚に追加
「志帆ちゃんにもすぐ出来るよ!志帆ちゃん、綺麗だもん!」
「そりゃどーも」
これはいつものお世辞だ。
菜子はいつも私を『綺麗』だと褒めてくれる。
菜子から見た私は、『綺麗』で『頭が良く』て『クールビューティ』らしい。
正直どれも、友達の贔屓目だと私は思っている。
「あ、次移動教室だったよね?もうそろそろ行かないと!」
ふと時計に目をやった菜子が、思ったよりも進んでいた時間に慌て、急いでお弁当を仕舞う。
「そうだね。行こっか」
私も菜子に合わせて立ち上がり、私達は教室へ戻ることにした。
戻りながらも、菜子の幸せトークは止まらなかった。
「それでね!先輩ってば、」
「はいはい。ちゃんと聞いてるから前見て歩いて」
「はーい。…あ、でね!」
と菜子は、一度は前を向き直ったものの、またすぐにくるっと回転して少し後ろを歩く私の方を向いた。
すると勢い余って、菜子が後方にバランスを崩す。
「あ…」
「ちょ、菜子……!」
菜子は、転びそうになったが、転ばなかった。
ある人が彼女の背中を支えてくれたから。
「大丈夫?菜子」
それは、菜子には聞き覚えのある、優しい声。
振り向くとそこには、大好きな人がいた。
「椎名先輩!!!」
「もー菜子ってば!だから前見てって言ったのに!」
私はすぐに菜子の元へ駆け寄り、心配の声を掛ける。
「ごめんなさい…。あ、先輩、ありがとうございます!」
反省も束の間、菜子はすぐに目の色を変え、椎名先輩にお礼を言う。
「うん。気を付けてね」
椎名先輩は、優しく菜子を見つめる。
その場の時が止まったかのように、菜子と椎名先輩がじっと見つめ合っていた。
「おい。授業に遅れるぞ」
私が割り込めなかった2人の間に入ってきたのは、また新たな男性だった。
最初のコメントを投稿しよう!