先輩、足りません!

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「ん?ああ、そうか。もう行かないと」 椎名先輩の友達のようだ。 恐らくは2人で教室に行く途中、椎名先輩が菜子を見つけ、助けてくれたのだろう。 「こいつが、お前の彼女?」 優しく微笑む椎名先輩とは違い、もう1人の先輩は目つきが悪く、怖い印象を覚えた。 しかも、言葉遣いも少し荒い。 「うん。さっき話した菜子。可愛いでしょ?」 椎名先輩は菜子を友達に紹介し、さらっと素敵な褒め言葉も付け加える。 この辺りが、菜子がこの先輩にメロメロな理由の1つなんだろう、と私は思った。 「そんな、可愛いだなんて…」 「いや。可愛くない」 菜子が嬉しそうに、椎名先輩の腕を軽く叩くと、すかさず先輩の友達は、ばっさり切ってきた。 「へ?」 「お前の恋愛フィルターかかってんだろそれ。こいつはよくて中の上だ。普通。言うほど可愛くはないぞ」 言葉遣いが荒いだけではなく、放つ言葉もひどかった。 先輩が褒めてくれてるんだから、そのまま乗っかればいいだろうに。 わざわざ波風を立てることはない。 菜子はあまりの暴言に驚き、目をぱちくりとさせていた。 「笹木(ササキ)、失礼だよ。菜子に謝って」 先輩は友達に容赦なく怒っていた。 「いやだって…。ほら、そこの」 先輩の友達ーーー笹木先輩は椎名先輩の怒りを察知し、突然私を指さしてきた。 「そっちの友達は、上の上。かなり綺麗だし、比べればそりゃ見劣りするだろ」 笹木先輩は、いきなり私を矢面に立たせた。 私は、争いごとは避けて通りたいタイプなのだが、笹木先輩に、かなり強引に争いの中心に引っ張り出された。 「いや、私はそんな…!」 私は両手を顔の前でブンブンと振り、即座に否定する。 その時だ。 キーン コーン カーン コーン 校内に予鈴が響き渡る。
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