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「お前は自分が年上だからって気負いすぎなんだよ。白嶺君にしてみれば、お前が一言『寂しい』って言うだけで、どんだけエネルギーチャージできることか。男なんてそれくらい単純なんだよ」
猪熊の言うことも何となく理解できる。
しかし自分がそう言うことによって、彰が益々無理をしてしまうことはわかっていた。
無理をして身体を壊してしまってはどうにもならない。
そんな彩音の考えを読んだのか、猪熊は更に言葉を重ねる。
「白嶺君だってもう二十六だろ? いくら神経細いっても、そう簡単にぶっ倒れやしない。不規則な仕事ってことはわかってるんだし、身体くらい鍛えてるだろ。そういうとこストイックだからな、彼は。体調管理もきっちりしてるだろうし、佐京が心配するのもわかるが、もうちょっと信頼してもいいんじゃないか?」
「猪熊さん……」
「それに、一番キツイ収録の後でお前に会いたいって言ってんだから、別の日にだって会いたいだろう。……まだ若いんだし、寝る時間削ってでも彼女と会うのを優先するだろうよ」
猪熊の言葉は不思議なほどしっくりと彩音の心に入ってくる。
彩音の表情に自然と笑みが零れた。
「……何かちょっと元気出ました。ありがとうございます、熊パパ」
「誰が熊パパだっ!」
間髪入れずにペシッと猪熊にはたかれる。
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