as~恋に落ちる音~(3) ─迷う─

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 ◆◆◆ 「はい、OKです。お疲れ様でした」  彩音が声をかけると、収録ブースから此花が爽やかな笑みを向けた。  今日は珍しく、此花のナレーション収録があったのだ。  子供向けの面白実験番組のナレーションで、此花のクリアな声質は先生っぽくもあり、みんなのお兄さんといった風でもあり、番組の内容にピッタリだった。  此花はブースから出ると、コントロールルームに顔を覗かせる。 「ありがとうございました、佐京さん!」 「こちらこそありがとうございます。ちょっと待ってくださいね、これ保存したら出ますので……」  彩音がマウスを操作していると、此花がニッと子供のような笑みを浮かべた。 「ちょっとだけ佐京さんのお仕事見学してもいいですか?」 「え?」  彩音が目をぱちくりさせていると、此花が「失礼します」と言ってコントロールルームの中に入ってくる。
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