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「梨花ちゃんも頑張ってるし、俺も頑張ろうかなって。そしたら思いがけず佐京さんのところのナレーションの仕事が入ってきて、やったーって思いましたよ!」
頭はまだフリーズしたままだったが、ここだけは何とか躱さなくてはなるまい。
彩音は軽くいなすように、何とか笑顔を作って言った。
「私、もう三十路越えちゃってるそこらの普通のおばさんだし、此花さんには勿体ないです。頑張るとか、とんでもないですよ。だから……」
此花の手に力が入り、彩音は言葉に詰まる。
此花は真剣な面持ちで彩音をじっと見つめていた。
「俺にとってはそうじゃない。俺は佐京さんより年下で頼りない風に見えるかもしれないけど、それは俺と付き合ってみてから判断してもらえませんか? ……佐京さんは自分で “おばさん” なんて言っちゃうけど、俺には魅力的な女性にしか見えません。仕事にプライドを持っててかっこいいし、いつもベストな状態で収録させてくれる心遣いが温かくて、すごく親しみやすくて……年上の女性に失礼かもしれませんが、可愛いと思ってしまう」
「……」
ダメだ、どう躱せばいいのか全くわからない。
彩音は完全に混乱してしまっていた。
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