as~恋に落ちる音~(3) ─迷う─

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『彰のことが好きで、自分たちは付き合っている』  この一言で全て解決するはずなのだが、梨花のことを聞いて言葉が出なくなった。  梨花のことは何とも思っていないと彰は言っていて、それはもちろん信じている。  ただ、梨花がアプローチを続けていると知って、途轍もない不安が押し寄せてきた。  今はそうかもしれないが、これからは?  彰が梨花になびかない保証なんてどこにもない。だって、梨花はまだ若くて、あんなに可愛らしいのだから。 「……此花さんは年上が好きなんですか?」  彩音が尋ねると、此花は照れたような笑みを浮かべる。 「年齢を意識したことはありません。年上でも可愛い人は可愛いですし、守ってあげたいと思います。佐京さんはしっかり者っていう感じなんですが、ふとしたところで可愛らしい一面が垣間見えてたまんないんですよね。白嶺さんも、きっとそういうところに惹かれてるんじゃないかなぁ」  そういえば、彰はどうして自分のことが好きなのだろう?  唯一心を許せる相手だから? だとしたら、その心許せる相手がもう一人できたとしたら? そしてそれが自分よりも若くて可愛い女性だとしたら?
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