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彩音はフゥと息を吐き出しながら、ゆっくりとヘッドフォンを外し、背後に視線を移した。
制作に携わる男性が一名、そして広報の女性一名が後ろに控えていた。彼らは今日の仕事のクライアントだ。
二人とも満足そうに頷いている。特に女性の方はうっとりとした表情をしていて、彩音は気付かれないように小さく笑む。
彼女の気持ちもよくわかる。
あんなセリフを、これでもかというほどの甘い声で囁かれるのだ。夢見心地にもなろうというもの。
二人に軽く会釈をし、彩音は目の前の小さなマイクをオンにして、録音ブースに向かって声をかけた。
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