二、並木道、アトリエ

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 ***  それから何度か、孝は彼女のアトリエへ通った。色づいた紅葉(もみじ)の並木道を歩いて。  彼女が何をする人なのか、孝は知らない。絵を描くから、画家かもしれないし、歌を歌うから、歌手かもしれない。  彼女のアトリエにはクラリネットが置いてあったが、演奏しているところは見たことがなかった。それは、(ほこり)(かぶ)っているようにも見えた。 「小萩さん」  孝は彼女をそう呼んだが、彼女は孝の名前を呼ばない。 「ねえ」  ただそう言って、孝の意識が向いたのを認めると、 「どう思う?」  そんな具合に、言葉を続ける。 「きれい……。小萩さんの描く絵は、どれもきれいです」
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