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「あのね……お昼に見慣れない兵士さん達がいたでしょ?私、知らない人がいると気になってしまうの。あれ、王都の兵士さんじゃないでしょう?鎧の紋章が違ったもの。ねえ、お姉さん、教えて?あの人達誰なの?なんでこんな平和な所に来て色々聞き回っていたの?」
俯き、不安そうな声色を出しながら知りたい情報を尋ねる。
あくまでも体は年端のいかない子供なので、演劇をの経験がないミライでも相応の振る舞いを演じることができるのだ。
あまり言い難い情報なのか言葉を選んでいるのか、女性は腕を組んで長く沈黙している。
やがて腕組みを解くと、机の引き出しに入っている紙を取り出してミライに差し出した。
「なんでも、山を越えた隣町の貴族の子供を探しているらしい。何者かによって家は全焼したみたいなんだけど、大人の亡骸は見つかって、子供の亡骸はまだ見つかってないみたいなの。生きてたら貴重な証言者になるし、跡継ぎだから必死になって探してる、ってわけ」
(王都からの派遣ならそうなんだろうけど、一貴族の雇ってる兵士が主だって探してるなら、最悪連れて行かれた先で始末される可能性がある……。……あの兵士と盗賊の雇い主に辿り着くかも……?でも、シンがいるから……いや、ここは異世界で、小説で読んだような世界ならもしかしたら……)
ありがとう、と笑顔で紙を返してティーカップを手に持つ。
女性が出した紙は手配書で、アイリスとシンの簡単なプロフィールが書いてある程度のものだった。
似顔絵もない手配書では見つかるものも見つからないだろう、と若干呆れながらハーブティーを飲む。
意外な美味しさに驚きつつ、ティーセットを取り出した食器棚の隣にある、引き出しがいくつもあるチェストに目をやる。
ティーカップを置き、椅子から降りて女性の方に体を向けた。
「じゃあ、私帰るね。教えてくれてありがとうお姉さん。でも、兵士さんに向いてないよ」
「あはは、よく言われる。でも、家族のためだから」
「優しいね。サービスで、お姉さんは殺さないであげるね」
え、と女性が声を漏らした瞬間、扉を突き破って土色の手が伸びてきて女性を掴んだ。
拘束された女性の腰に差してある鞘から剣を抜き軽く振るう。
「剣って結構重いのね。でも、女性用だから少し軽いのかな?さて……」
剣を構え、奥の部屋へ続く扉を睨む。
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