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「どうした!?」
入り口の破壊音を聞きつけ、奥の部屋で寝ていた男性が剣を携えて飛び出してくる。
そのタイミングでミライは胸を狙って突きを放った。
一瞬硬直するも、子供の腕力による突きの速度は大人のそれよりも遅く、剣の腹を腕で払って回避する。
しかし、回避されるというのは予想していたことであり、真の狙いはムジュンによる攻撃だ。
女性を拘束している巨大な手から棘が伸びてきており、剣を払った直後に男性の頭を貫く。
意思が繋がっているミライだからこそできる連携である。
「はあ、やれやれ。苦しまないようにしてあげただけ感謝してよ。……っと、やっぱり女性用に軽くしてあったのね……こっち、重っ」
男性の持っていた剣を拾い、二本の剣を棘に刺すとズブズブと呑み込まれていった。
「さて、と。あるかなー」
チェストを全て開け、中の書類を取り出していく。
空になると、ミライと女性が向き合っていた机の引き出しの中にある書類も回収する。
「うん、これだけあれば十分。撤収」
棘と手が引いていき、一メートルサイズのハート型に収まる。
「ムジュン。モード・フープスター」
ミライの合図と共にハート型が二本のリングに変わり、交差して十字型になった。
その中心に向かって跳躍すると、体がゆっくりと浮き上がる。
「くっ……待って!何故私を生かす……!先輩を……なんで……!」
拘束された時に腕の骨が折れたのか、両腕をだらりとさせて転がった状態で苦しそうに話しかけてくる。
「貴女が優しい人だったから。あの人は私に害をなす人だったから。……早く兵士辞めた方がいいよ。争いの火種であり続ける限り、私の敵になるから。じゃあ、今度こそ、さよなら」
ミライが念じると、リングになったムジュンが隠れ家に向かって飛んでいく。
その間にも奪った書類を眺め、めぼしい情報が載ってなければ丸めて投げ捨てる。
戻ってからも読み続け、結局目的のものを見つけた時には書類は四枚ほどまで減っており、隠れ家の床には紙のボールがたくさん転がっていた。
(こんな山に囲まれた辺境に流れてくる情報なんてこんなものよね……。しかし、裏便利屋、ねぇ……)
相応の金額を払えば品物を調達してくれる便利屋という職業が存在している。
裏便利屋は便利屋と違い、違法品の調達や暗殺等の犯罪をメインに扱う職業である。
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