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『言ってる事の意味が全くわかりませんが……とにかくすごいということですね』
「まあ、私の両親が作った物だから、私もよく知らないんだけど……」
いくつもの山や町を越え、夜明け前には王都の近くまで訪れることができたのだった。
ゆっくりと降下し、ムジュン・フープスターから出るといつものハート型に戻す。
『それで、どうやって裏便利屋さんを見つけるんですか?』
「ああ、それは簡単」
自信満々に言うミライに、姿は見えないアイリスが首を傾げた。
疑問は、方法と共に驚愕へと変わる。
☆☆☆
薄暗い路地の奥にひっそりと立つ、closeの札がかかった何かの店と思われる建物。
ランプの明かりだけを頼りに、倉庫で作業をしている女性が二人いた。
「はあ……。連続で遠出とかやめてほしいわ……」
「わかる。準備不足」
麻袋から物を取り出し、チェストや樽といった決められた場所に入れていく。
それが終わり、さてと立ち上がったところで、小柄な女性が勢いよく扉の方を見て両手にナイフを構えた。
ワンテンポ遅れて、ガントレットを付けた女性も細剣を構える。
やがて、扉がノックされ、ミライが一人で現れた。
「へぇ……。意外と普通ね。裏便利屋なんて名前だからもっと地下に籠って活動とかしてるのかと。あ、初めまして、ミライ・ユイシロです」
「家名持ち……ということは貴族様!?」
「聞き覚えない」
「……ああ、なるほど。アイリス・フォーレライと言えばいい?」
アイリスの名を持ち出した途端、二人の表情が驚愕に変わり、武器を納めてミライから離れて何かを話し合う。
(家名持ちが貴族ってどういうこと?)
『この世界は、苗字?でしたか、それを持ってるのは貴族ぐらいなんですよ』
(なるほど?今後は気をつけないと……)
話し合いが終わったのか、二人が近づいて来る。
おそるおそるといった表情で、ガントレットの女性が話しかけてきた。
「あの……本当にアイリス様なんですか?」
「そうだけど?」
「生きてらしたんですね……。ここへはどのようにして……というより、どうやってここが……」
上着のポケットから袋をいくつか取り出し、口を開けて中に詰まっている砂を撒き散らす。
床に手をつき、マップと唱えると砂が浮かび上がり、王都の立体地図となった。
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