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「この家買った時あった物置。使ってなかったから使って。掃除はしてる。狭くはない」
「ありがとう」
一つだけスライドドアになっている部屋に入ると、彼女の言う通り狭くはないが丁寧に掃除されていた。
いつでも使えるようにしてあった部屋に向かって感謝と、これから使わせてもらうという礼の念を込めてお辞儀をしてからムジュンに指示を出す。
ベッドや冷蔵庫等の隠れ家から持ってきた物を出して設置していく。
冷蔵庫に疑問を持ったユリエルに説明すると、またも驚いた顔で何度も開閉を行う。
苦笑しながら中のジュースを取り出して渡すと、栓を外してゆっくりと口を付ける。
「っ!冷たい……。店で出てくる飲み物でもこんなに冷たくない」
「マジで。飲食店やったら儲かるじゃない」
「また飲みたい」
「いつでも。補充しておくわ」
満足そうに頷くと部屋を出て行った。
シンを奥に寝かせ、自分も寝転がり目を瞑る。
(朝はよろしく、アイリス)
『はい。おやすみなさい』
少し経つと静かに寝息を立て始める。
その頃ジェラスとユリエルは、ミライが持ってきた依頼料という名の金銀財宝を片付けていた。
硬貨を袋に詰め、高く値がつきそうな美術品は慎重に倉庫に納めていく。
「どれだけ持ってきたのよー……。こんなの、この稼業始めて初の依頼料よ」
「ん。ジュースも美味しかった」
「え、何それ、ズルい!って、うーわっ!これ、モダルトの作品じゃない?!相場で金一万枚はするわよ!?」
「一昨日の依頼、百回分。こっちの彫刻は?」
「二百年前のロイベルの作品!ひゃっほぅ!アイリス様様~!」
普段美術館等の施設でしかお目にかかることのない品々を前に興奮を隠せないジェラスが、傷が付かないように梱包して慎重に並べていく。
作業を終えると、鼻歌を歌いながら店の開店準備を整え始めた。
「本物だと思う?」
樽の中から液体を柄杓のような物で掬い、瓶に詰めながらポツリと呟くと、ご機嫌だったジェラスの顔が真顔になる。
「私が最後に見たのは三年前だったけど面影はある。それに、依頼料を貰ったからには誰であろうと、私達の雇い主だから」
「でも今回の依頼厄介。王都に捜索の手が回ってない。最悪大臣クラスが相手」
「おやおやぁ?いつになく喋るじゃないですかぁ。もしかして、怖いのかにゃぁん?」
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