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ニヤニヤとした気持ち悪い笑顔を浮かべるジェラスに、内心苛立ちながらも瓶に液体を入れ続ける。
ミライの依頼である復讐に関しては、手配書が王都以外に回っていることは二人共知っていた。
それをさせている人物も当然既知であったが、何故王都にだけその動きがないのか、というのが問題である。
(王様と仲が良かったフォーレライ家。その子供が生きていた。なら王様はフォーレライ家再建に支援するはず。それを良く思わない者……。心当たりが多い)
早急に準備を整えて情報収集に旅立たねば、と荷物の内容を脳内でリストアップしていく。
終えて、帰ってきた時に飲む冷えたジュースを想像すれば、自然と口元が緩みニヤケ顔になった。
ふと視線を感じ、横を向くとジェラスが驚いた表情でユリエルを見ていた。
緩んだ口元を直し、怪訝そうな顔を作る。
「何?」
「いや、ユリのそんな顔初めて見たな、と思って。三年も一緒にいるのに、妬いちゃうなぁ。……仲良くなれそう?」
「別に。依頼主と被用者。それだけ」
「ま、いいけどね。で、持っていく物は?」
瓶と樽に蓋をして、ポケットから取り出した紙にアイテム名を書き連ねていき、スッとジェラスに渡す。
受け取ったメモを見て数回頷いた後、わかったとポケットにしまった。
「二日後に出発する。私とアイリス様で」
「おっけ……ん?私はシン様と留守番?」
「当然。アイリス様は復讐って言った。手を下すでも見届けるでも直接出向きたいはず。それにジェーンに子守は最適。精神年齢同じ」
「なにをーぅ!」
吠えるジェラスに、ふっと小馬鹿にしたような短い息を吐くユリエル。
実際には短い付き合いだが、長年一緒に過ごしていたと思わせる掛け合いを、開店時間になるまで続けていた。
朝日が昇ってからしばらく経った頃に、ぱちりとアイリスの目が開く。
ゆっくり起き上がり、大きく背伸びをして、手を握ったり開いたりして体の所有権が自分であることを確認。
その後、ベッドから降りたアイリスはタンスを開けてヘアゴムを取り出し、綺麗な栗色の長髪を束ねて後頭部でくくってポニーテールにする。
ベッドの下から桶を取り出し、床に置いて傍に立ち目を瞑って桶を指差す。
「水のマナよ……満たす水の奇跡をここに。ウォーテル」
呪文を唱え、体内にある魔力を消費して魔法を発動させる。
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