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(……ああ……短い人生だった……。でも……もうすぐパパとママに会える。次は平和な……)
魂が遥か上空にある光に向かって、吸い寄せられるように昇っていく。
やがて、自分の存在全てが溶けていくような感覚に包まれ、未来という生命が終わりを迎えた。
「その魂はもはや呪いだ。何度転生しようと、争い事から逃れることはできないだろう。聞こえてはいないだろうが、次の生ではどのような悲劇が待ち受けているか……」
誰もいない空間で声が響き、未来の魂が光の玉となってどこかへ飛んでいく。
それは世界の境界を越え、別の世界の知らない大陸にある豪華な装飾の家に降りていった。
その数ヶ月後、その家から女の子が産まれ、町中の人がお祝いの品と言葉を持って訪れた。
「皆さん、我が娘アイリスのために集まっていただき、本当にありがとうございます。娘に、父ウェインは私の誇りだといつか言ってもらえるようになるため、より一層この町に尽くしていきたいと思います」
宣言通り、数ヶ月後にはウェインの働きにより町には更に活気が溢れることとなり、観光や移住者が増える賑やかで豊かな発展を遂げていった。
王城に呼ばれ功績が讃えられたのもあり、発展に拍車がかかることになる。
その際、王都に居住を移して城内で働かないかと提案されるも、微笑みながら首を横に振るのだった。
「私は生まれ育ったあの町をもっと良い町にしていきたいのです。それが使命でもあり、家督を譲ってくださった父にできる恩返しだと思っております。それに、貴方様には私などよりも優秀な家臣達が周りにいらっしゃるではありませんか。対して私はしがない地方の一貴族……田畑を耕しているのが性に合っています」
肩を竦めながら話すウェインに、王はニカッと笑って膝を叩いた。
「ははは。お前がそこまで言うなら仕方がない。良い、先程のことは聞かなかったことにしてくれ」
「残念なことに私は最近記憶力が悪くなっているようでして、先程のこと、というものが何を指しているのやらさっぱりで」
「くくく、そうかそうか。どうやら私も同じようでな、大臣達の些細な失敗も見たらすぐ忘れてしまうのだ。……おっと、まあ、なんだ。行き詰まったり困ったことがあればいつでも相談に乗ろう」
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