プロローグ

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傍に控えていた大臣の一人が軽く咳払いをして注意を促すと、笑いながら立ち上がりウェインの肩を叩いて去って行く。 その謁見の様子を家に戻ってすぐに妻であるリリアに話し、二人で楽しそうに笑うのだった。 王の友人、またはお気に入りとなったウェインはますます町に貢献し、いくつかの年が過ぎた頃には城を構えてみないかという話まで出てくるほどになった。 貴族でも城を築いている者は少なくなく、相応の町を治めているという一種のステータスでもある。 その頃にはアイリスは上手に言葉が喋れるようになっており、弟となる男の子シンも産まれていた。 彼女は風と土の魔法に長けており、町の子供の中では一番上手く魔法を操れ、ウェインに似て人当たりが良いと評判だった。 更に一年が経った頃、ウェインが急に体調を崩し、寝込むようになった。 リリアが看病のためにウェインの部屋に籠り、アイリスはシンと二人でベッドで寝ている。 その時、突然リリアの叫び声が聞こえてきた。 びっくりして飛び起き、寝ているシンを抱き抱えながら扉を開けて部屋の外を伺う。 複数の足音と未だに続くリリアの大声に戸惑いつつも、恐る恐るウェインの部屋に近づいていく。 開いている扉の陰に隠れながら中の様子を覗き見ると、黒装束の男が振った剣に背中を斬り裂かれるリリアの姿が視界に入ってきた。 「馬鹿野郎!女は殺すなって言われてんだろ!」 「飛び出してきたんだから仕方ねえだろ!」 「ええい、静かにしろ!これだから盗賊連中は……!」 男達が揉めているが、母親が斬られる瞬間を目撃してしまったアイリスは足が恐怖に震え、その場に座り込んでしまう。 その微かな音に、一番扉の近くにいた男が振り向く。 「ちっ!ガキに見られてたか!こうなりゃ一家皆殺しだ……!」 「おい、勝手なことを……!」 腰に差していたナイフを抜き、静止の声を無視して近づいてきた男は手に持つ凶刃を振りかぶった。 (私、死んじゃうの……?ママみたいに殺されちゃうの……?嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ……!誰か助けて……!私と弟を助けて……!) ギュッとシンを抱きしめたところで、アイリスの意識はプツリと途絶えた。 刹那、背後の廊下の壁を突き破り、男を弾き飛ばして土の壁が二人を覆う。
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