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宿を見つけて部屋に入ると、二人はそれぞれの場所であったことを話し始めた。
「マルタに会って、少しだけ自分のことが分かった気がするよ」
実際に蓬莱で自分の身に起こったことを振り返ると、自分の異端さに改めて気づく。それがマルタと話して確信へと変わった。
「僕、受け入れるように努力することに決めたんだ。自分の神獣のこと・・・」
「・・・そうか」
ただハーネスは黙って話を聞いた。ピエラが自分に対して覚悟を決めてこられたことが、何故か自分のことのように清々しさをもたらした。
「良かったんじゃないか?覚悟を決めたんだろう?」
「うん。もう、迷わないよ。大事なものを守るための力なら、惜しまず求め続けるんだ」
それでいい。言葉にはしなかったが、ハーネス自身も満足気に頷いた。ここまで長らく旅路を来たが、これを機に、新たに再始動できる気がした。
「ふあああぁぁぁ・・・・・そろそろ寝るか・・・・・」
ろくに寝ていなかったせいか、突然眠気が襲ってくる。
「そうだね。お休み、ハーネス殿」
「あぁ、お休み――――」
そのまま眠りの淵に誘われ、ハーネスは眠りに就いた。睡眠欲のないピエラにとっては、この時間が最も長い時だ。無理矢理「寝る」という行為をしなければ眠ることが出来ない。
「神獣、か・・・」
――――神獣を受け入れれば、自ずと過去は見えてくる――――
マルタは別れ際にそう言い残した。その言葉が頭から離れずにずっと考えてしまう。
(僕に過去が無い限り・・・ずっと孤独なんだ・・・・・・)
一人は嫌だった。深い闇の中、一人で拭えない不安や不満と戦う勇気など、彼にはなかった。常に誰かが傍に居てくれる安心感を、彼は知ってしまったから――――。
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