干支の13

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日付が変わった頃、二人がちょうど峠の頂上に差し掛かった時だった。二人の前に全長一メートル程のベビが道を横断していた。すると男は素早い身のこなしで瞬く間にヘビの首をはね殺めた。「悪く思うな、これも生きていくためだ。この世はやるかやられるかだからな。」ヘビはグネグネと苦しそうにのたうち回っている。すると男が娘に言った。「おい、娘。後で分けてやるからヘビをこの袋に入れておけ。」そう言って男はヘビと女の間に小さな麻袋を放り投げた。そう言うと男は娘に背を向けて歩き始めた。それは男が初めて見せた隙であった。娘はまだグネグネと動くヘビを素早く両手で掴むと無防備に背中を向ける男の首をそのヘビで絞め上げたのだった。「ぐぅ、娘…、てめぇ…」男はほどなくして気を失った。 男が目を覚ますと持っていた金目の物は無くなり、身包みは全て燃やされて煤に変わっていた。当然娘の姿はどこにも無く、男の傍らにはあのへビが残されて、まだ微かにピクピクと動ていて、まるで男をあざ笑っているかのようであった。 8.悪魔たちの午後に     
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