干支の13

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とある正午過ぎに男の前に突然悪魔が現れた。その悪魔は体調一メートル程で全身が黒色で背中には小さな羽が二つあり、腰の辺りから細く長い尻尾がはえていた。「やぁ、人間。見ての通り私は悪魔だ。我々は今暇なのだ。暇つぶしに貴様の願いを2つ叶えてやろう。」「本当か?ならオレを億万長者にしてくれ。頼む。」「それは無理だ。私は願いを叶えてやるとは言ったが、どんな事でも出来るとは言ってないぞ。」男はムッとした表情をして、少し考えた後に喋り出した。「なら、明日のスポーツ新聞は出せるか?そして出せるならオレを中央競馬場まで移動させてくれ。」「どちらも可能だ。だが、そんな願いでいいのか?」「ああ。それで良い。オレの願いは億万長者だ。それを叶える為に今日のG1レースで万馬券を当ててやるのさ。」「承知した。でわいくぞ。」もう次の瞬間には競馬場のトイレの個室に明日の日付のスポーツ新聞を片手に瞬間移動していた。男は早速ス ポーツ新聞の競馬のページを開いて今日のレース結果の記事を探した。「なになに、『このレースでは六番人気のサムタイムビートが快心の走りを見せ、一着でゴール。三連単の配当金は百二十四倍になりました。表彰式の時に夕立が降り、雷が鳴りだしてその音に驚いたサムタイムビートが尻餅を着くと言うハプニングがありました。騎乗した騎手は〝レース中じゃあなくて良かったです。この馬は特に雷が苦手で、きっと勝ててなかった。〟と語っていました。』か。よし。」男はスポーツ新聞を細かくちぎり、トイレに流して処分した。男はトイレを出て券売機でスポーツ新聞で見た6番‐7番‐1番の三連単馬券を買った。もちろん全財産をつぎ込んだ。「流石に分かっていてもドキドキすな…。」男はスタンドへと移動し、ドキドキとワクワクが同居した何とも言えない高揚感を抑えながらレースが始まるのを今か今かと待ちわびている。 そして十五時二十分、一斉にゲートが開きレースが始まった。六番人気のサムタイムビートは中盤よりやや後方の位置に付けている。どうやら最後の直線で〝マクリ〟に来るようだ。     
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