干支の13

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レースは順調に進み、馬群は団子状態で最終コーナーを抜け最後の直線に入ってきた。小気味好い解説がスピーカーから聞こえている。「おーっと!何と6番人気のサムタイムビートがものすごい走りで先頭に躍り出た~??残りは二百メートルーー!」男はもう興奮を抑えることなど出来るはずもなく大声で叫び狂っていた。その時ゴールの前方の大庇の屋根に轟音と共にものすごい光の筋が出現した。競技場のパラボラアンテナに巨大な落雷が直撃したのだ。「何だ?何故今雷が落ちるんだ?」男が呆気に取られた瞬間「おーっと??サムタイムビートが落馬!落馬です!」この瞬間未来は変わった。男が全財産をつぎ込んだ馬券はただの紙切れへと変わったのであった。 遡る事一時間… 「なるほど。おい、悪魔。貴様は雷を落とすことは出来るのか?」「お安い御用さ。天気を操る事ぐらい。」「よし、じゃあ二つめの願いは十五時二十一分にあそこに見えるパラボラアンテナにとびっきり大きい雷を落としてくれ。」「承知した。だが、そんな願いで良いのか?」「ああ。大丈夫だ。6番人気のサムタイムビートは雷に弱いらしく、驚いて尻餅をつくようだ。これでオレは億万長者だ。フハハッ!」 再び十五時二十一分… 「やった??未来は変わった??ハハッ、フハハハハ??」男は倒れ込み大笑いした。「おーっと!ここで先頭集団の混乱に乗じて8番人気のモーメントリズムが内から抜け出し一着でゴーーール??何と言う大波乱!配当金は三連単で五百五十二倍で超高額配当になりまたーー??」男はむくりと起き上がった。「なに?どういう事だ?7番人気のミニッツアルペジオじゃないのか?」「…なお二着につけていた7番人気のミニッツアルペジオは落馬したサムタイムビートを避ける為に大きく失速し、七着となりました。繰り返します…」こうしてこの男の全財産もただの紙切れと化したのであった。 8.野生の力     
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