干支の13

15/28
前へ
/28ページ
次へ
その生物は全身を汚い灰色の毛で覆われていた。全長は約二メートルで幅約一・五メートル、高さ約二メートルほどの正体不明の生物だ。その生物は数週間ほど前から村に現れるようになり畑を荒らし、作物を食い荒らす様になったのだ。畑には外から野生の動物が入ってこれないように木製の柵がぐるりと周囲を囲っていたが、その生物は柵を難なく壊して畑を荒らしたのだった。次に村人は柵を鉄製でさらに電流が流れる様に作り替えた。しかし生物はその柵も一撃で破壊してみせたのだ。どうやら生物の体毛は分厚過ぎて電流を通さないようであった。村人たちは柵による防御を諦めて、生物を寄せ付けないようにする作戦に打って出た。村や近隣の村から集めた優秀な猟犬に畑を見張らせたのだ。数日後畑から犬たちの叫声が響き渡った。村人たちは急いで畑に集結した。そこでは数匹の猟犬が気を失って倒れいて、一匹は生物に飛びつき噛み付いて離れない。もう一匹は村人が見 守る中生物の体当たりによって十メートルほど飛ばされて気を失ってしまった。生物にしがみついていた一匹も振り回されて柵と激突し気を失った。生物は村人らが見つめる中、悠々と作物を食い漁り山の方へと帰っていった。業を煮やした村人たちは生物を駆除する事に決めた。近隣の村から腕利きのハンターを雇って生物が毎回現れる畑を見おろせる丘から狙い打つ作戦だ。数日後案の定生物が畑にやって来た。いつもの様に体当たり一発で柵をなぎ倒すと作物を貪り始めた。ハンターは狙いすまして引き金を引いた。弾は見事に生物の首であろう辺りに命中したのだが生物は何事もなかった様に食事を続けている。続けてハンターはもう一発ぶっ放した。それも見事に横っ腹辺りに命中したが結果は同じで、生物は気にも留めなかった。やがて生物は腹を満たし終えて山へと帰って行ったのであった。生物の体毛は村人達が思っていたよりはるかに分厚く丈夫でライフルの弾さえも通 じなかったのだ。いっその事生物に火をつけて燃やしてしまおうという提案もあったが流石にリスクが高すぎる為却下された。村人たちは打つ手が無くなり途方にくれるほかになかった。     
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加