干支の13

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とあるジャングルの奥地にて二人の男が切り株の上で呑気に寝ていた小猿を容易く捕まえた。男らはテレビ番組のディレクターでこのジャングルに撮影の下見に来ていて、たまたま見つけた猿を捕まえたのであった。猿は脇腹をがっしりと掴まれてキーキーと鳴きながらもがいている。「この猿はまだ若いから高く売れるぞ。」「そうだな。猿は利巧だし、珍しいからペットとして欲しがるヤツも多いだろう。」「ふふふ、オレの国では猿は万能薬で珍味とされているんだ。」「なんだって?猿を食うのか?」「オレは食わんよ。だが、オレの国の金持ちや富裕層はとくに食いたがるんだ。そういう連中の間ではステータスとなっているし、どんな国にもその国の伝統の珍味みたいな物があるものさ。」 男らは猿にしっかりとヒモをくくりつけ、まるで犬を散歩させるかのようにつれて歩き始めた。「なかなか過ごしやすくて良いジャングルだったな。」「ああ。雰囲気は抜群だし湿度もそれほど高くもなく過ごしやすいし、“しきたり”や伝統にうるさい先住民や部族の類も住んでいないと来た。これだったら傲慢でワガママな出演者たちも文句はないだろう。後は無事に帰るだけだ。」男らは元来た一本道を快調に歩いていた。すると突然猿がけたたましく叫び暴れ始めた。「なんだ、こいつ。急に暴れ始めやがって。」「食われると悟ったか?少し痛い目に合わしてやろうか。」男が手を伸ばそうとしたその時突然数m先の崖が崩れ、道が寸断されたのであった。男らは顔を見合わせてフーと息を吐きながら脱力し、笑い始めた。「危ないところだった!もう少しでオレらは生き埋めになるところだった。」「この猿は利巧だな。まさか命を救われるとは思いもしなかった。」「しかし     
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