干支の13

19/28
前へ
/28ページ
次へ
「コケコッコーー!」今日もまた男はいつものように鶏の鳴き声で目を覚ました。男は眠い目を擦りながらベッドがら起き上がり洗面スペースで顔を洗った後に鶏の様子を伺いに行くのが男の日課であった。鶏はメスが一羽居るのみで、もう結構な老鶏で卵は産むには産むが、三、四日に一個程度であまりあてに出来るものでは無かった。「おっ、今日は産んでるな。」男は数日ぶりに産み落とされた卵を軽く拾い上げるとそのまま調理スペースに向かい慣れた様子で目玉焼きを焼き、朝食とした。男は十分ほどで朝食を摂り終わると、コーヒーを飲みながら一息ついてから食器を片付け、続けざまに部屋の掃除を始めた。十五分ほどの掃除が終わると次は家庭菜園の手入れを始めためるのであった。百㎡ほどの面積に芋類から柑橘類まで多種多様な作物が育てられていて、今日はトマトとキャベツが収穫できたのであった。毎日四時間ほど作業をこなして、昼食にはその日に収穫した野菜 を調理し食すのが日課であって、今日メニューはトマトとキャベツのスープであった。昼食後は小一時間ほど昼寝をしてそれから仕事を始める。仕事の内容はほぼ毎日決まっていて、主な作業は日々蓄積されていくデータの入力、整理、積算が中心であった。データは三百六十五日二十四時間採取されていて、常時蓄積されていくので一日でも仕事を怠ると膨大な量の仕事が溜まるため男はこの九年間毎日仕事をしていた。いつもだいたい三時間ほどぶっ通しの作業でやっと一日分の仕事が一段落するのであった。仕事を終えると次は夕食の準備に取り掛かる。大体の場合は昼食の残りに一手間かけてそれを夕食とするのであった。この日は一週間前に収穫したジャガイモでニョッキを作り、昼に作ったスープに加えて夕食とした。男は夕食を食べ終わると物思いにふけながら数分間ボーっとしたのち鶏の世話を始めた。ケージの床を掃除し、餌と水を補給した。毎日最後の仕事に鶏の世話 をするのが男の日課であり、ルーティーンとなっていた。男は世話が終わると一言「今日も無事に終わることができたよ。明日も六時に頼むよ。」と鶏に感謝を伝えてから男は眠りについた。     
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加