干支の13

2/28
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
一時間ほどして全ての窓と出入り口を塞ぎ終えて男が中に戻って来た時だった。「ギィャーー??」再び女がさっきの倍ほどもあろうかと言う大声を上げた。全ての作業を終えて胸を撫で下ろしていた男がやれやれと言った感じで女の元にやって来た。「またか?」見ると今度は数匹のネズミが部屋を走り回って逃げ惑っていた。「何なんだいこの古家は?幾ら何でも気味が悪いよ!」男はまだ冷静だった。「こんな古家だから身を隠せるんだよ。こんな草原に放置されているような古家ならまず安心さ。」女は納得いかない様子で声を荒げた。「いくら身を隠せてもこんなネズミだらけの所じゃ病気になって逃げ延びる前に病気で死んじまうよ!ほら!まだそこに居るじゃないか!」男が部屋の隅に目をやるとそこには二十匹ほどのネズミが一箇所で塊になってもぞもぞと動いていた。「はぁ、分かったよ、オレが退かしてやる。」男は箒と塵取りでネズミを掃き取りゴミ箱に移し始めた 。一度に掃き取れるのはせいぜい五、六匹づつであって、男は五、六回掃き取った時にふとネズミの数が一向に減らないことに気がついた。男は手を止めて塊になっているネズミを見た。するとネズミの一匹一匹が分裂して、一匹は二匹に、二匹が四匹へと増えていき、その数を加速度的に増やしているのだった。「何がどうなってるんた?ネズミが次々に千切れて、どんどん増えていきやがる?」男がこの状況を飲み込めずにいる間にネズミはどんどん増え、あっという間に部屋を、古家パンパンにした。そしてプチ、プチっと続けて二回鈍い音がしたの後に古家は内側から弾けて倒壊した。大量のネズミが溢れ出て、辺りはネズミで埋め尽くされていた。やがてネズミはそれぞれが各々の行きたい方角へと散っていっただった。 ??アメーバネズミ…名の通りアメーバのような単細胞生物で、繁殖期になると細胞分裂を繰り返し瞬く間に一匹が数十億に増える性質がある。 2.運が良いヤツ     
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!