干支の13

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男はこの中型の宇宙漂流ポッドでの自給自足の生活をもう九年も続けている。生きていく上で絶対に必要な水は宇宙を漂う氷の粒を装置が回収し、水に変えてくれるので心配はいらない。メインエネルギーである電気も無重力発電機が永久に回り続けて発電をしていて、船の動力をはじめ男の生活の大部分を支えている。 環境破壊が進み人々の争いが絶えない母星に嫌気がさして最低限の装備で宇宙に飛び出してからはや九年…。男は移住できる星を探しながら漂流し続けている。男の相棒であり男以外唯一の動物である鶏だけが今も地球時間の二十四時間を刻み続けながら毎日欠かさずに地球時刻の朝六時を男に知らせている。この船にある数少ない地球の名残を伝えてくれる存在であり男の生活を精神的にも支えているのであった。 11.今年は… 彼はいつも悶々とした不充実な日々を過ごしていた。もちろん生活は豪華で優雅なとは程遠いにせよ食べるものには困っているわけでは無く、雨風をしのげるだけの住居はあるし、それなりに愛は感じていた。だが、彼も含め、彼らは全く納得などしていなかったのである。その大きな理由はなんと言っても奴らが原因であった。奴らも食う物には困らずに雨風をしのげる環境に住んでいるのだが、その生活レベルは彼らと比べると遥かに優遇されていて、何よりヤツらは彼らより遥かに愛されていた。それは明らかに見ても分かるし、肌でも感じられたので気にせずにはいられないものであったので、彼らは悶々とした気持ちで日々過ごしていたのである。     
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