干支の13

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「もはや我々にはどうしようも無い事なのかもしれないが、今では我々の役目は人々に癒しを提供するという事に限定されている。しかし、残念な事にその役目も我々はヤツらにかなりの遅れをとっているのが現状だ。人々は生き急ぎながらも我々に“癒し”を求めていたが、日々年々強さを増して渦を巻きながら乱高下して流れて行くこの時代の激流の中では人々にとっては我々はその特性上とても負担が多かったのだ。大昔のように我々と協力して生きていく道もとうに終わり、一昔前までのように緩やかで暖かかった時代は過ぎ去っていくにつれて我々は疎遠にされていき、かわりに人々はヤツらを好むようになったのだ。もはや大昔のように我々と人々が二人三脚で生きていた頃は過去の栄光である。 だがそんな我々も今年は未来への希望を願わずにはいられないし、復権への“キッカケ”になり得ると信じている。何せ今年は十二年に一度人気も地位も奪われ、苦渋を舐め続けている我々が忌々しき猫たちに一矢報いれる年なのだから。」 12.終わりは突然に 惑星クレメンスはあと数日で移住から五十年を迎えようとしていた。第二の故郷となったこの星では七十億の人々が衣食住の充実した故郷の星と変わらぬ生活を送っていた。その中心にして無くてはならぬ存在となっているのが“イノシシ”であった。何故人類は元いた星では田畑を荒らす厄介者として駆除されていたイノシシをこの星に連れて来たのか? 人類は故郷の星を離れるときにどんな動物を連れて行くかを協議した結果、家畜としての能力や大きさ、知能の高さや人類との共存能力などを多種多様な要因を考慮したときに他の動物を遥かに上回る性能を持っていたのが“イノシシ”なのであった。     
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