干支の13

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雨の深夜に二人の男が古びたの納屋にたどり着いた。「だいぶ遠くまで来ましたね。」「ああ、ここまで来れば安心だ。ゆっくりと仕事が出来るぜ。」二人の男は牧場から肉牛を一頭盗んでてここまで逃げて来たのだった。「まさかこんなに良い牛が外に無防備に繋がれているなんて俺たちな運が良かったぜ。」「へぇ、そうなんすか。確かにアニキこの牛を見た途端に即決で決めましたもんねぇ。」「ああ、オレは前に牧場で働いていた事があって、その時に良い牛の見分け方を習得したから分かるんだよ。この牛は肉付きも最高だし毛並みも良いいから高値で取引されるはずだ。しかし、このままではすぐに盗難品の牛だと足がつくから肉にして売り捌こうって魂胆さ。」「へぇー、じゃあ俺たちはこんな上質の牛を手に出来てとても運が良かったんすねぇ。」話もそこそこに男は背負っていた布で巻かれた一メートルほどの荷物を取り出した。男は荷物の布を解き包まれていた巨大な 包丁を研ぎ始めた。男が包丁を研ぎ始めたので、子方の男は納屋の柱に手綱をしっかりと繋いで、まじまじと牛を観察し始めた。 「それにしても本当に大人しくて落ち着いた牛ですね。」「ああ、こんな牛は今まで見た事がないな。本当に火の打ち所のない良い牛だ。」男は包丁研ぎながら相づちを打った。その後もしばら牛を眺めていた子方の男は少しトーンの下がった声で男に話しかけた。「アニキィ、オレなんだからこの牛を〆るのが可哀想になって来ましたよぉ。」「今更何言ってやがる?俺たちは明日食う物の保証も無いんだぞ。さっさとこの牛を潰して金に変えねえといけないんだ。」「でもコイツ今から〆られるってのにとても優しくて穏やかな目をしてるんですよー。」男が牛を見ると確かに全てを受け入れ、運命に抗う事なくただただ凛とした牛がそこに居た。「ねぇ、アニキィ、コイツ全く抵抗しないし、堂々としてるんですよ。こんなに優しそうなヤツを〆るなんて無理ですよ。」「うぅ、確かに今までこんなヤツは見た事ねぇ。」男は少し怯んだが、再び包丁を研ぎ始めた。だが、しばらくす     
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