干支の13

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ると丹念に研いでいた包丁を叩きつけ、号泣し始めた。「出来ねえ…。オレにはこんな凜として、何の疑いもなく無垢な眼をしたヤツを潰す事なんて。オレは今まで多くの潰されていく牛を見てきたが、こんな気持ちになったのは初めてだ…。」二人は声を上げながら泣いた。しばらく泣いた後、男は子方の男に牛を繋いでいた縄を解くように言い、子方はそれに従った。「縄は解いた。後は腹が減ったら何処へなと行くだろう。じゃあな。」二人の男は牛に向かって声をかけ、雨が降りしきる夜の闇の中に消えていったのだった。 数日後… 「オーナー、いました!こっちの納屋です!」「こんなに遠くまで運んでいるとはな。手間を掛けさせやがる。で、犯人はどうだ?」「バッチリです。瞳カメラに犯人の二人の男が写ってますので、すぐにご用です!」「犯人め、情が湧いたか、尻込みでもして何も手を出さなかったようだな。何かしら手をかけていれば、この超高性能牛型警備ロボットが備え付けのマシンガンでたちまち蜂の巣にしていただろうからな…。」 3.世界一の…     
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