干支の13

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男は徐に歩き始めた。どこまで続いているからも分からないこの大地を。しかしどこまで続いているか分からないと思っていた大地は五十メートル程進んだ所で壁にぶち当たったのだ。厳密には壁の数十メートル前から徐々に上り坂が続いていて最終的に壁へと繋がったのだ。男は百八十度方向を変えまた歩き出した。すると百メートルほど歩いた所でまたしても壁にぶち当たったのである。こちら側も反対側と同じように壁の数十メートル手前から上り坂になっていた。薄暗くてよく分っていなかったのだが、どうやら空も宇宙まで届いているわけでは無くせいぜい数十メートルくらいに見えて、大地も同じ事であった。男は理解した。どうやら全く別の場所に移動した事は分かっていたがそこは洞窟であったのだ。何故自分が洞窟にいるのかは全くの不明であったが、男は安堵していた。何故なら洞窟であれば何処かに出口があるはずだし、追っ手の姿もないので、洞窟から出れさえす れば、追手から無事逃げ切れると思ったからであった。 男は壁に向かって右側に歩き始めた。右に行く事は何と無く決めた。壁の手前は坂になっているので斜めに坂を下りながら歩いて坂を下り切るとそこからはただひたすらに平坦な道を進んだ。しばらく歩いていると突然洞窟が揺れ始めた。男はとっさに身をかがめ頭を両手で抱えた。地震らしき揺れだった。その揺れは男なが今まで体験した中でも断トツに強いものであって、男はかがんでいるにも関わらず身は投げ出され数メートル飛ばされた。地震は数十秒で収また。しかし男には先程までは持ち合わせていなかった“恐怖”という感情が芽生えていた。何故ならここは洞窟なので、もしまた地震が来て洞窟が崩壊してしまったら自分は生き埋めになってしまうからだ。男は歩みを早めた。小走りで今まで進んでいた道の先を急いだ。すると前方にオレンジ色の光が見えてきた。男はその光に向かって更に歩みを進めた。その光の正体は天井から細いヒモのようなものでぶら下がってい     
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