3 半歩だけの歩み寄り

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しかし、あの交差点やコミック店で老婆や真帆に見せた積極性とは真逆に、 案外彼はシャイな性格なのだろうか。 ミナトの近況を交えた長い真帆のメールに返ってくるのは、 割と簡素な文面ばかり。 それどころか、こちらから促さなければ、真帆の投げた質問に対する答のみになることも、しばしばだ。 それでも、やり取りを繰り返していく内に、少しずつ彼という人も 見えてくる。 出身は山梨県で、真帆よりも二つ年上の25歳。 地元の高校を卒業して公務員になり、食べ歩きが好きなこと。 現にミナトを拾った日も、あの町にある古い支那そばを食べてみたくて 行ったこと。 カバンに付いているボン吉をくれた親友は漫画オタクで、彼が付き合っている彼女とも漫画のオフ会で知り合ったこと等々。 そして、久しぶりに電話で話をしたこの日、真帆は、その「オフ会」という 幹彦の言葉に思わず乗っていた。
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