3 半歩だけの歩み寄り

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「ホントですか!  でも、あれって確か50巻くらいあるんじゃなかったでしたっけ?」 「はい。全部で、57巻です。 だから、もし大丈夫ならそちらに一気にお送りしますし、 邪魔なようなら、少しずつお貸ししてもいいですし」 「うわぁ、嬉しいです。じゃあ、少しずつお借りできますか?  その代わり私は、由矢さんが好きそうな美味しいお店を探しておきますから」 それで食の好みを尋ねると、カレー以外は何でも大丈夫だという。 「えっ? カレー、お嫌いですか?」 カレーといえば、給食でも人気の子供の頃から慣れ親しんだ国民食だと 思い込んでいた。 それだけに真帆は、少しばかり驚いた。 だが、そんな彼女の声に、再び電話の向こうの声が淡く苦笑いを浮かべる。 「別に嫌いじゃないんですけど、なんていうか、食べ過ぎたというか、 食べ過ぎてるというか……」 そしてこんな会話の最後に、次の週末に久しぶりに会うことが 自然と決まっていた。
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