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ハッと目を覚ます。
先程まで、いつも閉じ込められている薄暗い蔵の中に居たはずなのに気付けば白霧山の入り口で寝そべって居た。
そこでようやく薬を盛られ気を失っている間に此処へ連れて来られたのだと、今年の生贄は自分なのだと思い出したが、そんな最悪の状況下でも変わらず冷静だった。
お山の入り口は蔦が絡まった赤く大きな鳥居が建てられて居て、近くで見ると少々不気味さを感じさせる。
中と外では纏う空気が明らかに違うという事は見れば分かる事だけれど、不気味だと感じるだけで無く私の心にはどこか好奇心もあった。
ゆっくりと鳥居をくぐる。
不思議な事に中へ入った瞬間、濃い霧が私を包み進むべき道が見えなくなってしまったのにも関わらず、誰かに操られているかのように私の足は自然と動き山奥へと進んで行く。
道が見えず分からないのに、分かるといった何とも言い表せない不思議な感覚。
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